しょぼくれた文字の意味 by Ryujin
手紙を書こうと思ったのは、
また逢うためのまじないでした
なんど 愛おしい名前を呼んだことか・・・
僕の声を きみにとどけたい
だから このしょぼくれた文字が
僕の存在 僕のしるし
このしょぼくれた文字が
僕自身なのです
手紙を書くことで またきみと逢えるのなら
僕は何度でも手紙を書きましょう
でも もし手紙の文字が
しょぼくれて見えるようになったなら
きみは僕の存在を忘れなければなりません
僕は言霊となって きみに逢いにきたのです
<後記>
映画「硫黄島からの手紙」、そしてテレビドラマ「硫黄島 戦場の郵便配達」を見て。
僕がその時代を想像し、愛する人へ手紙を書いてみました。
筆不精の僕が手紙を書くことなど、通常では考えられない。
その僕が手紙を書くとしたら、それは愛する人との再開をまじなう手段。
気の利いた言葉など書くことができず、でも心いっぱいの愛情に満ち溢れている。
そんな苛立ちと寂しさが、しょぼくれた文字として表れてしまう。
でもそのしょぼくれた文字こそが、僕自身の気持ちであり愛情なのだ。
そんな手紙を受けとった愛する人には、しょぼくれた文字に見えるはずもなく、
僕らしいと微笑ましく思い、元気な僕に胸をなでおろすのだろう。
しかしある日、そのしょぼくれた文字に気づいた時、
それは僕からの最後の手紙だと気づく時なのだ。
その手紙が愛する人に届く頃には、僕はもうこの世には存在しない。
僕は言霊となって、彼女に最後の愛の言葉を伝えにやってくる。
「僕のことは、もう忘れてください・・・お幸せに・・・」
生きて戻ることのない、戦場からの手紙・・・
彼らはどんな気持ちで最後の手紙を書いたのだろうか?
考えれば考えるほど悲しくなってくる。